Mコマンド(MCMDとも表記する)とは、大規模表構造データ(CSV)を高速に処理する目的で開発されたコマンド群である。 その起源は、1990年代初頭にまで遡ることができ、ある大企業で実施された大規模システム開発プロジェクトにおいて 松田康之氏が発案したものであり、MコマンドのMは同氏のイニシャルに拠っている。 同氏の発案は、単なる技術論ではなく、ビジネスにおいて「情報」システムとはどうあるべきかを根本的に問うたものであり、 これまでに我々が西洋から学んできた方法論とは全く異質のシステム設計思想と言ってもよいであろう。 その思想的内容については別稿に譲るとして、その技術内容においては、 現在のビッグデータ処理技術に酷似していたことは書き留めておく。
それはさておき、Mコマンドは、単一の機能(例えば、並べ替えや表の結合など)に特化したコマンドを約70種類提供している。 全てのコマンドは共通して、標準入力からCSVデータを読み込み、標準出力に結果を書き込むだけの非常にシンプルな処理方式に従っている。 そして単一の機能を持ったコマンドを「パイプ」と呼ばれるプロセス間通信を使って接続することで多様な処理を実現する。 これらの特徴は、まさにUNIXの思想であり、MコマンドとはUNIXコマンドだけで情報システムを構築しようとするものである。
Mコマンドを使えば、標準的なPCであっても、数億件規模のデータ処理が可能であり、 Mコマンドの習得にはさほど時間は必要としない。 これまでにも文系の学部生に簡単な指導を行ってきたが、集中的に取り組めば数週間で、 かなり自由にデータ加工ができるようになる。